今年創業102年目を迎える白鳥製薬。自社で開発・製造する医薬品の原薬を医薬品メーカーに提供している。最近では創薬研究や健康食品の分野にも注力。変化を恐れない企業姿勢を基盤に、人類の健康に貢献している。
白鳥製薬 白鳥悟嗣さとし 代表取締役社長(中央)
先進的かつ創造的である姿勢を崩さず、研究開発型企業として発展してきた白鳥製薬、本社にて
白鳥製薬の主力製品は、医薬品原薬である。医薬品原薬とは、医薬品の最終製品ではなく、医薬品に含有されている有効成分で、例えばカフェインやイブプロフェンなどがそれに当たる。
いわば白鳥製薬は、製薬会社を支える"医薬品原料メーカー" ともいえる。
白鳥悟嗣社長は、「医薬品原薬は、医薬品の効能・効果の主たる成分で、それだけに安全性や有効性、品質管理が厳しく求められます。当社では、国際基準であるGMP(Good ManufacturingPractice)やFDA(米国食品医薬品局)の規制に従って、国内外の多くの製薬会社のニーズに応えられる、高品質の原薬を提供しています」と説明する。
白鳥製薬の創業は1916 年。創業者は白鳥社長の曽祖父に当たる。創業者は茶葉(茶くず)から天然カフェインの抽出に成功、"白鳥式カフェイン製造装置" の名で国内初の特許を取得し※ 、事業基盤を築いた。
その後、天然カフェインは合成カフェインへと進化。その過程で培った独自の合成技術や抽出技術を軸に、付加価値の高い医薬品原薬の分野に進出した。「当社が100年以上続いてきたのは、時代に合わせて変化を実践してきたから。その挑戦的な企業文化は、今も当社の根本にあります」と白鳥社長は言う。
脳の中枢神経に働く治療薬の創薬に挑む
医薬品原薬の製造は製薬会社からの受託事業だが、同社では製薬会社のレシピ通りに製造するだけでなく、蓄積されたデータや製造ノウハウを基に、より効率的な製造法を提案する。
白鳥製薬 吉野博
専務執行役員
R&Dセンター センター長
同社R&Dセンター長である吉野博専務執行役員は、「当社が評価されているのは有機合成における技術力や、アイデアを製品につなげるセンスや発想力の部分。
今当社が注力しているジェネリック医薬品には、品質やコストに対して厳しい要求があり、世界中の製法特許を回避しながら開発する難しさがありますが、R&Dセンターの研究員は常に競争力のある合理的なプロセスの開発に挑戦しています」と同社の強みを語る。
その受託事業に加え、現在注力しているのが創薬の分野だ。ターゲットは脳の中枢神経に働く低分子医薬品で、目指すのはアルツハイマー病やパーキンソン病、鬱うつ病や癲癇てんかんなどの治療薬である。
研究員に求めるのは「前例がないからやってみよう」というチャレンジ精神
「現在、世界的に知られるアルツハイマー型認知症の進行抑制剤アリセプトを開発した杉本八郎・同志社大学客員教授らと共同で開発を行っています」(吉野専務執行役員)
「新薬は当たれば大きいが、成功の確率が低く、時間も予算も必要。しかし創薬を通して経験値を積み、研究員のモチベーションを上げるためにも、自社リソースの2割程度を投資しながら、会社の夢として追究しています」と白鳥社長は意気込みを見せる。
エビデンスと品質管理に自信を持つ健康食品を直販
白鳥ウェルファーマ
藤井千春 事業部長
健康食品の主力はDHA・EPAを効率よく摂取できる「クリルオイル」など
同社のもう一つの挑戦が、健康食品事業だ。医薬品原薬の開発で培った知見と技術を生かしながら、オリジナルの天然素材の開発と健康食品の製造を行っている。
OEM※※も行うが、自社ブランドの確立と浸透のため最近は直販にも力を入れている。
直販事業を担当する藤井千春事業部長は、「当社の健康食品の強みは、素材研究から商品開発、製造、販売、アフターフォローまで一貫体制で取り組んでいること。エビデンスを積み重ね、効果効能や安全性を担保した製品を、自信を持って販売しています」と語る。
オリジナルの天然素材に関しては、千葉大学やタイの最高学府といわれるチュラロンコン大学との共同開発があり、製品は厳格な品質管理を実施する食品GMP認定を受けた自社工場で製造される。製造と販売が異なることが多い健康食品業界で、数少ない一貫体制企業だ。
「誇大広告の健康食品が淘汰されていく中で、しっかりとしたエビデンスや品質管理能力を持つ当社の健康食品の優位性は際立つはず」と白鳥社長は自信を持つ。
習志野市津田沼にあるR&Dセンターでは女性の研究員も活躍している
伝統的に男女の区別なく働ける環境を提供する同社では、産休・育休からの復職率も100%と高く、女性が活躍できる場が整えられている。企業理念は"Change theWorld" 。老舗の100年企業でありながら、変化を恐れず"世界を変える" 会社を目指している。
※※Original Equipment Manufacturingの略語。製造を発注した相手先のブランドで販売される
Credit: Diamond.jp